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悠哉
「………」
ちらりと母さんのことを見る。
智美
「……ふふ」
俺の感情を読み取ったのか、「大丈夫よ」と軽い微笑みを見せる母さん。
慶治
「さ、こっちだ」
智美
「ええ」
べつに慶治さんを信用していないわけではない。
ただ、心のどこかで俺は、母さんを取られたくないっていう気持ちがあるのかもしれない…。
だから、こんなにも胸がざわつくんだろうか。
まったく…。
早く親離れしないとだめだな、俺。
美夏
「とおぉ!!」
悠哉
「いてぇ!!?」
なぜかいきなりの裏回し蹴り。
華奢なかかとが、俺の横腹にめきめきっとめり込むのがわかる。
春菜
「な、なっちゃん!?」
秋穂
「あーあーあー…」
悠哉
「な…なぜだ…。なぜ俺は蹴られた…」
美夏
「お近づきの印にっ」
ニカっと小悪魔のように笑う。
悠哉
「ほう…おもしろい……。俺とやろうってのか…?」
野生の猛獣たちは、威嚇後、相手が一歩でも後ろに下がったら、一気に遅いかかっていく。
つまりだ、今ここで俺が引いたら、やつはその勢いで俺に噛みついてくるつもりなんだ。
だから俺は、一歩も引くわけにはいかん!
悠哉
「いいか? 俺の音速のパンチを見てろよ。
とお、ととととととお、たあっ」
その場で無数のパンチを繰り出してみる。
秋穂
「ぶふぅっ、くくく…」
なぜかお腹を抱えだす秋穂ちゃん。
美夏
「……一生やってろ」
悠哉
「つっこめよ! それか乗れよ!
このまんま続けさせられるのはきついだろ!?」
美夏
「……とめない…」
悠哉
「へ?」
美夏
「こんな…こんなあほが兄弟になるなんて、絶対に認めないんだからー!!!」
悠哉
「あ、ちょっ…」
秋穂
「おーおー…行っちゃったねぇ…」
悠哉
「……まじかぁ…」
おちゃらけたキャラは嫌いだったかな…。
春菜
「ご、ごめんね。
は…初めてのことだから、きっとどうしていいかわからないんだよね」
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