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「もしもーし」
『おい瑛太、後ろ振り向いてみろよ』
そいつは含み笑いと共にそんなことを言い出す。後ろに居るのか、と思いながら振り返る。
が、そこには頭に描いた人物は居なかった。俺は電話に向け声を発した。
「振り向いたぞ?」
『まだ前向いてんじゃねぇかよ。こっちだよ、手ぇ振ってるから早く振り返れ』
一応もう一度振り返るが手を振ってる人間等いるはずもなかった。
「冗談なら切るぞ」
『はぁ? お前が振り向かないから――』
プツ
強制的に会話を打ち切る。どうせこいつも見間違いだろ。そのくらいにしか思わなかった。
思わなかったが……。
なぜだか少し、嫌な予感がしたんだ。
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