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「はぁ、はぁ、はぁ……」
暗闇をただひたすら走る影が見える。
雲に遮られた、僅かな月明かりに照らされ、サーチライトから逃れながら走るそれは、白い布切れを纏っていた。
辺りからは軍用犬のけたたましい鳴き声や唸り声が響いている。
それは確実に、この影に迫っている。
ふと、雲の隙間から完全な月明かりが辺りを蒼白く照らし出す。
一瞬その影の姿が見えた。
女性だ。
歳は10代後半だろうか。
しなやかに伸びた手足、肩の辺りでザックリと大胆に切られた黒髪。
右手の甲には識別番号のような数字が刻印されている。
そのしなやかで柔軟な体が、簡単には追い付かれそうもないスピードと、気配を消す能力を作り出している。
「くそっ!行き止まりか!」
大分走り通した彼女の目の前には、厳重に張り巡らされた厚く高い壁がそびえ立っていた。
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