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後方50メートルには、何者かの足音と、軍用犬の鳴き声が迫っている。
彼女は少し屈み、足に力を込めると、音もなく空へと舞い上がった。
白い布切れをなびかせながら、厚く高い壁をいとも簡単に飛び越えてしまった。
「おい。今の見たか?防壁を飛び越えていきやがった。」
「バカな!対ベルゼ用に造られた壁だぞ。
マズイ!外に逃げられては、あまりに危険だ。」
防弾チョッキにマシンガンを装備し、迷彩服を着用した兵隊らしき人々が、そんなやり取りを交わす。
「とにかく、包囲網をしき、直ちに捕えるんだ。」
「はっ!」
東京23区とほぼ同じ広大な敷地を誇り、厳重なセキュリティに守られた研究施設に、けたたましいサイレンの音が鳴り響いていた……。
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