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「新二馬鹿だなぁ~」
「別に嫌いとは言ってないんだが…。」
「アイツがお前の事好きなだって事ぐらい気づいてやれよ。」
「…」
新二は薄々気づいていたが、まだ会ったばかりで好きと言われても何も言えない。
「いくらなんでも、好きじゃない、ってはっきり言うのはひどいだろ。アイツだって好きだからあんなことまでして振り向いてもらおうとしたんだろ。」
「てか由利に起こさせたの兄貴だろ」
「まあな」
新二はため息をついた。
(好きじゃなかったらあんなことしないよな…)
「まぁ、昼飯作れって。」
「…」
兄弟二人は部屋を出て、下の階へ降りていった。
一階には由利の姿はなかった。ただ、殴り書きで
〈外に行ってきます〉
と書かれた紙がカウンターに置かれていた。
「お前は飯作ってろ。俺が由利探してくる。」
と浩一は店を出ていった。
新二は一人、昼食の準備を始めた。作ってる時に由利の顔が何度も頭に浮かんだ。自分が寝ていた時の唇の感触。新二には由利の唇だった事も分かっていた。
(由利は本気で俺を好きになっている。俺だって…)
包丁で具材を切り刻んでいく。
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