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店から出た
由利は新二の事が好きだった。片思いだと分かっていたのに、新二にくっついていた。
(新二さん、私なんか好きじゃないんだ…。)
もう自暴自棄なっていた。抱きついたりキスすれば好きになってもらえる。そんなふうに考えていたのかもしれない。
昨日の夜に会ったばかりの人間なのに、突然好きと言われてもどうしようもない。そんな事分かっていたはずなのに。抑えられなかった後悔が由利を襲う。
昨日のベンチに座わる。また涙が出てくる。涙もろい由利は少しの事でも泣く。でもこれは失恋の涙だった。
(新二さんは私の事嫌いなんだ…。だからたまに不機嫌そうな顔をするんだ…。)
そう考えていると涙が頬をつたっていく。
「由利!」
浩一の声だった。
「勝手に出ていきやがって…。俺ら心配したんだぞ!」
「新二さんは心配してない…、私の事なんか…。」
「泣き虫だな、お前。また泣いてやがる。」
「ほっといてください…」
言葉を出す度に涙が出てくる。
「アイツはお前の事嫌ってないって。戸惑ってんだよアイツは…」
浩一はいつもは決して見せない、少し悲しげな顔をした。
「俺ら兄弟は両親に捨てられたからあまり人を信じられねぇ。俺はもう大丈夫でもアイツはまだ疑い深い。アイツは不器用なんだよ…、俺やお前と違って…。」
「…」
「今まで俺がアイツを引っ張ってきた。だけど、お前とだけはアイツ自身が関わろうとした。そうだろ?」
「はい…」
「アイツはお前の事まだ好きじゃないかもしれねぇ、でも嫌ってねぇよ。むしろ気になってんだよ。俺からのお願いだ。アイツの心を開いてくれ、そして側にいてやってくれ。」
浩一に頭を下げてお願いされた。
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