プロローグ

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喫茶店の中はカウンターとテーブルに分かれていた。 カウンター席は店員と向かい合う形になっている。 少女は注文したコーヒーを淹れている彼に話し掛けた。 「あの…、閉店時間は何時ですか…?」 「居たいだけ居ていい。但し寝るなよ。」 彼は機嫌悪そうにつぶやき、注文したコーヒーを少女に渡した。 「ところで年は幾つだ。」 「え…、16です…」 突然年齢を聞かれ、少女は不安そうな声で答えた。 「何でこんな時間にこの店に来たんだ?」 「…」 「話せないなら話さなくていい。」 「…実は、親と喧嘩して家出しました…。」 「そうか。」 その後、少女は一時間ほど彼と話をした。初対面のはずなのに自分の悩みを打ち明けることが出来た。 「私は一回学校をサボっただけなのに両親に家から追い出されたの…」 「さすがにそれはないだろうな」 「そうですよね。」 「話が変わるが君の名前は?」 「い、市橋由利です…」 突然聞かれ、反射的に答えた。 「ふ~ん、俺は佐藤新二だ。」 「この店を一人で経営しているの…?」 「兄と二人だ。三ヶ月前に養父が死んでから俺らが店を継いだ。」 「養父ってことはご両親は…!?」 一瞬の間があった 「俺らは小さいときに捨てられた…。」 (聞いてはいけないことを聞いてしまった…) そう思いながら話題を反らそうとする。が、彼は少し怒った口調で 「済まない、トイレに行ってくる。」 と言って奥に入って行ってしまった… 由利はする事もなく、カウンターに突っ伏した。 (聞かなきゃ良かった…) そのまま由利は眠ってしまった…。
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