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先ほどから一度も口を開かなかったシュンがニコニコと人の良い笑みを浮かべ、いきなり遵に話しかけてきた。
「は?」
「歯?…あー!ディープがいいのか!大胆だなぁ最近の人間は」
余程のプラス思考か、単なる馬鹿か計算か。シュンという妖精はズレているようだった。
「ばっか言うな!なんで男の俺が男(しかも妖精)のお前と……、…まさか女?」
怒ったり焦ったりとコロコロと表情を変える遵。
「あっはは!男だぜ。ムスコに挨拶すっか?」
「息子…?!お前子持ちか!!若そうなのに…妖精は手が早いな」
遵は正真正銘のバカだった。
「あははは!おもしれぇな。お前、気に入ったぜっ」
と言うとシュンは遵の方の上にちょこんと座った。
「まあ、あそこのバカコンビは置いといて、妖精は…男とキスするのが趣味なのかな?」
「ううん。趣味じゃなくてね、定期的にキスしないと人間界から消滅しちゃうのよ」
「うわ、面倒だね!妖精って」
「でしょ~もう、やんなっちゃうっ」
「ふむ、もしかすると、本を開けた人とじゃなければならないとか言うか?」
「メガネくん勘が鋭いね!大正解!そしてそれにプラスして本を開けた人と一緒に暮らさなければいけないんだ」
それを聞いた美智はふぅ、と一つため息を漏らしメガネをかけ直した。
「随分と厄介なものに巻き込まれた物だな。回避する方法はあるか?」
「…恐らくはないね。もし君たち三人が逃げたら大妖精様が何をするか分からないし…」
「まぁ何だか楽しそうだし、危害ないんだったらいいじゃん!こんな経験滅多にないだろうし」
「……仕方がない」
美智が広樹の言葉に対し、渋々といった感じで頷いたその時だった。
「だからオレ様の下僕…もといパートナーを今決めさせてもらうぜ!ちょうど三人だし」
タカはふんぞり返りながら、そう叫んだ。
「「「お前は絶対やだ」」」
三人は口をそろえてそう言った。
「………仲がいいな」
拗ねるタカをリアが慰める頃には辺りはすっかり夕焼け色に染まっていた。
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