『アイドルになりたくて』

3/9
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/61ページ
その後、母に平謝りして木村に返信すると、土手へと駆けた。といっても、土手は家から20メートル先にあるのだが。 土手に到着すると、すでに木村が土手に向かって石をコロッコロ、コロッコロ投げていた。 さっき返信したばかりなのにもう来てる~! 後に分かることなのだが、木村は土手にいた時に私にメールしてきたのだそうだ。 私は急に緊張してきた。告白されることが嬉しすぎてそれ以外は何も考えずにここまできたけれど、今から私は告白されるんだ。 震えながら木村の隣に座った。 木村は私が隣に座ってから私の存在に気づいて、無表情で言う。 「びっくりした」 「呼び出しといて何よそれ」 私はそう言って両方の頬を膨らませた。可愛さアピール1ポイントゲット! 「まあ、座れよ」 そう木村に促され、私は木村の隣に座った。 いよいよだわ。 「俺がこうやって河野を呼び出すなんて初めてだよな」 「…うん」 「何かさ、急に我慢できなくなったんだ。もう、今日に限って話そうって決めることができたんだ」 直球じゃない!そんな直球で言われると座っているのに立ちくらみがするわ! 「河野。俺、夢があったんだよ」 夢――。再び私は妄想の世界へとダイブする。 木村「河野。俺、夢があったんだよ」 私「夢って…何?」 木村「プロ野球選手だよ」 私「まあ、素敵」 木村「でも、俺中学の時に足悪くしただろ?だからプロ野球選手の夢は諦めた。でも、そんな夢よりもっとかなえたい夢ができてしまった」 私「(ものすごく間をおいて)何?」 木村「お前とずっと一緒にいたい」 キャピー!!! 私は魔法を使って川に流れる水をどこかに飛ばしたい衝動にかられた。しかし、私は魔法は使えないし、使えたとしてそんなことをしたら木村に一生嫌われると思った。 妄想タイム終了!私は尋ねた。 「なーに?」 「俺、アイドルになりたかったんだ」 ん?アイドル? 木村は野球一筋で硬派で熱い男…のはずなんだけど。 アイドル?私の妄想が大きく狂い始めた。 「ま、まあ素敵」
/61ページ

最初のコメントを投稿しよう!