プロローグ:炎に包まれて…

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……全てが燃えていた……。 紙も、 木材も、 壁も土も、 水でさえ……。 全てが音を立てて燃えていた……。 虫も、 人も、 何もかも……。 「な……んで……。」 理解できなかった。 このようになった理由も、 どうしてこの場所なのかも、 それを、自分が引き起こした事である事も……。 「……そんな。」 炎の色は黒かった。 夜闇より、暗闇より、黒い炎。 「うそ…だ……。」 口から、その言葉が出た。 そう言えば、悪夢から覚めると思ったから……。 だけど、これは現実、リアルだ……。 「うそだ。」 そう言った時、あるものを見つけた。 羽と宝石で装飾されたブレスレット。 それを付けた、途中から切断されている白い腕……。 …母さんの……腕だった。 「うそだあぁぁ!!」 叫び声は、夜闇に溶け込むように消えていった……。 炎の黒い光に照らされながら……。 僕の愛する人と共に……。 全てはこの時点で始まっていた。
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