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昼食を食べ終えると大樹達はバスで神子の塔へ向かう。
それは神子の塔から繋がっている魔道を使ってマドリカへ向かう為だ。
タイマートはマドリカとしか魔道を開通していないらしくさらにマドリカでもそのことを知っているのは十二天星魔術師と天老だけである。
バスの中で桜井レミはついつい大樹の顔に目がいってしまっていた。
『約束、したんだ……。もう、泣かない、って』
あの二人きりの夜の日からレミは大樹が気になっていた。
あの時の泣いていた大樹の姿が頭から離れなかった。
「(無理しちゃって……)」
レミは隣で要と楽しそうに話している大樹の笑顔を見て思った。
大樹が千年前のタイマートで何を見てきたのかは大樹自身からみんなに隠さずに話された。
その時は泣かずにただすこし落ち込んだ感じで喋っていた。
大樹は自分の過去を未だに話そうとしない。
それ自体は別にどうでもいい。
ただレミは大樹は人一倍無理をして抱え込んでしまうのだと思った。
そして自分のことより他人を絶対に優先する。
それがどんなに自分が傷つくことになろうとも。
「ん?なにレミ?」
視線に気がついたのか大樹がレミの方に振り返った。
「な、なによ。前向いてくれない?///……酔うわ」
「それはいい意味で?」
「は?そんなわけないでしょ。吐く方に決まってるじゃない」
「お前ホントにキツいな……」
ガクッと肩を落とす大樹。
本気でショックを受けたようだった。
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