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当時は十九歳だった帝が彼を引き取ると言った時、当然組織の構成員達は反対した。
だが、要は帝に懐いてしまい、離れようとしなかったのだ。
『大丈夫ですよ、要。安心しなさい』
『……うん……』
――――あれから要は、少しずつ笑ってくれるようになりました。
……と言っても、お菓子を食べている時が専らですが……。
「……帝、どうしたの……?」
「え? 何がですか?」
「……悲しんでいる様な感じがした……」
要は心配なのか、少しだけ眉を下げる。
帝は慌てて要の頭を撫でると、仮面を取って笑顔を見せた。
「大丈夫です。ほら、笑っているでしょう?」
「……うん……」
要は真顔で頷くと、帝の袖を握り、歩き出す。
「要?」
「……あっち、叢本さんが待ってる……」
大方、送信ミスについても謝ってくるだろう。
帝は叢本の謝る姿を想像して、溜息をついた。
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