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保健室に戻ると、青羅はお弁当を食べずに待っていてくれた。
「お帰りなさい、白銀先生。
市野君は先程帰りました。それと入れ替わりに、D組の木下智哉(ともや)君が、気分が悪くて休んでいます」
「ありがとうございます、霧雨先生」
保健室の扉を閉めようと手を掛けると、要が滑りこむ様に入ってくる。
その様子に驚いたが、帝は微笑を浮かべて頷いた。
「あら、要君久しぶりね。大丈夫?」
「……はい。今日もお世話になります、霧雨先生……」
要が挨拶をすると、ベッドの方から「要……?」という声が聞こえた。
衣擦れの音がすると、仕切りのカーテンが開き、細身の男子生徒が出てくる。
優しい茶色の目と髪をした、優しげな少年だ。
「あら、起き上がって大丈夫なの? 木下君」
青羅が声をかけると、智哉は要を見て微笑を浮かべる。
「だって、要が久しぶりに学校に来たから……。
寝ていられませんよ」
智哉は要に笑いかけるが、要は俯いてしまう。
そのまま帝の後ろに隠れようとすると、智哉がひょこっと顔を覗き込む。
「……っ!?」
「あらら、俺怖がられちゃってる……」
智哉が肩を落とすと、帝は微苦笑を浮かべながら首を横に振る。
「緑王君は人づきあいが苦手だそうでね。
話しかけられても、どう接していいのか分からないそうですよ」
「そうなのか? 要」
智哉が首を傾げると、要はおずおずと頷いた。
すると、智哉は笑顔を浮かべて要に近寄る。
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