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女生徒達はビクリと体を震わせ、少しずつ後ずさる。
「おやおや、女性にそんな目を向けてはいけませんよ、黒菱(くろびし)君」
チャンスとばかりに女生徒達を保健室の外に追い出しながら咎める帝。
黒菱は軽く鼻を鳴らすと、押し殺した様な声で訊ねる。
「木下は?」
「へ? 木下君ならそこに居ますよ?」
きょとんとした表情で立っている木下を見つけると、黒菱は打って変わって笑みを浮かべて近付く。
「おい、大丈夫か木下。お前が保健室に行ったって聞いて驚いたぞ」
「なんだよ桐生(きりゅう)、そんな大袈裟な……。ってか、お前また一年の教室行ったの?」
「お前の教室に行ったら、居ないからさ。
手近な奴に聞いたら保健室だって聞いて、走って来たんだぞ」
黒菱桐生は三年C組の生徒だ。
裾が長い黒髪に金色の目、学園では喧嘩っ早いと有名で、女生徒はおろか男子生徒も近寄らず、彼自身もあまり人に近付かない。
ただ、この智哉と要には素を見せていた。
「ん? なんだ要。お前学校来ていたのか」
「……うん……」
要が小さく頷くと、桐生は歯を見せて笑いながら要の頭を軽く叩く。
「そっか。また陰口叩いてくるやつがいたら、俺に言え。
しめてやるからさ」
「……うん、分かった……」
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