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しばらく歩いていると、二年の教室に差し掛かった。
クリスティア高等学園は、一学年四クラスあり、成績レベルなど関係無しに、バランス良く組まれているのだ。
そのうちの一つから、足元がおぼつかない女生徒が出て来て、帝を見ると安心した様に微笑む。
「白銀せんせ……」
「どうしました? ふらついていますが……」
今は授業中。とすれば、これから保健室に来る気だったのだろうか。
帝は女生徒に近寄ると、彼女の顔を覗きこんで額に触れる。
熱は無いらしい。
「熱はありませんね。貴女、お名前は?」
「B組の近藤恵里(こんどうえり)です。
なんだが目眩がして、今から保健室に行こうと……」
途中で恵里の体が傾斜し、桐生の方へ倒れ込む。
桐生は慌てて支え、眉間に皺を寄せた。
「あ……ごめんなさい、黒菱先輩」
「なんで謝る。そんなふらついて、保健室まで行けるのか? ったく」
桐生は溜息をつくと、急に恵里の体を持ち上げ、横抱きにした。
「く、黒菱せんぱ……?」
「俺が運ぶ。喋んなよ」
「だから、女性には優しくしなさいと言っているでしょうに。
君は本当は優しい子なのに……」
帝は溜息をつくと、恵里に微笑みかけ、来た道を戻り始めた。
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