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「ええ、今からそちらに向かいます。では」
仕事用の携帯で青羅に連絡をすると、帝は恵里に微笑を向けた。
「霧雨先生が休める準備をしてくれていますから、それまで我慢して下さいね」
「大丈夫です。黒菱先輩が運んで下さっているので……」
桐生は前一点を見つめ、けして彼女を見ない。
帝が溜息をつくと、桐生は視線だけ帝に向け、眉間のしわを深くした。
「ねえ白銀先生、先生って彼女居るんですか……?」
「なんですか、急に。居ませんけど……」
この手の話しは苦手だ。帝が困った様に頬を掻くと、恵里はクスリと笑う。
「ふふ、先生可愛い。そういう人が苦しむ顔って、きっと素敵でしょうね」
「お前、何言って――――」
「黒菱君、彼女を捨てなさい!!」
帝の鋭い声に反応し、桐生は恵里を放り投げる。
彼女は猫の様に着地すると、ゆらっ……と立ち上がった。
「白銀、どういう……」
「彼女の姿を、良く見ておきなさい」
帝は袖からナイフを取り出すと、桐生の前に腕を翳し、下がる様に促す。
そうしている間にも恵里の体がどす黒い煙に包まれていく。
「まさか学園にまで侵入しているとは気付きませんでした。
貴女、中級の悪魔ですね?」
帝が冷静に問い掛けると、どす黒い煙の下から現れた恵里――――悪魔は、口角を吊り上げて笑った。
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