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ハジは熱で朦朧とする頭で夢を見た。夢の中で彼は森の中を歩いていた。森には獣が優雅に闊歩する。ちらほらと見えるのはエルフェンたち。
「リュー?」
ハジは走った。リューがいる。彼はまだ夢の中にいるという意識がなく、駆け寄らずにはいられなかった。
(ハジ?)
リューは立ち止まって振り返った。ハジは彼の下半身を見て硬直する。リューの腰から下は鹿の胴体。
(ハジ、会いたかった。近くにいても、話をすることは出来ないからね。僕は精霊になってしまったから)
ハジは奇妙な姿の亡き友人を見て涙した。酷い喧嘩をしてそのままあの事故。
「精霊になったって?」
(生き物は死ぬと精霊になるんだよ。ずっと傍でお前たちを見ていた。消えていなくなるんじゃない。姿が見えなくなるだけなんだよ)
リューは優しい笑みを浮かべてハジの頬から涙を拭った。ハジにはその笑みが懐かしく、神々しいとさえ思え、罪悪感と懺悔でいっぱいになった。
(僕はお前に悪いことをした。お前のことだから自分を責めて責めておかしくなってしまうんじゃないかって)
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