覇者ヴァルマン

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 爆音が大地を震撼させる。乾燥した草原に走るより速く炎が駆け巡る。獣の悲鳴、人の怒号、そして歪んだ歓声。ハジは地面に身を伏せた。彼の前方で火炎弾が炸裂。鉄の破片が肌を浅く切り刻む。痛み、恐怖、死。だらだらと流れる鮮やかな血。 「ハジ、こっちに。殺されるぞ。奴らが来る」  戦友マーフェンの叫び。同時に足元へ毒矢が刺さる。頭の中は恐慌状態だった。殺される。敵のエルフェンたちが発する奇声が耳に突き刺さる。もういい。殺せ、殺してくれ。瞬くような凄まじい速さで射られる毒矢に剣でどう太刀打ちしろというのだ。 「もう殺せよ……殺せ」  隊長は彼ら大勢の部下、哀れな捨て駒を置き去りにして退却したらしい。またか、とハジは嘲笑した。万事休すだ。見捨てられた。彼はしょせん初陣直後の下っ端。捨て駒以下の動く物に過ぎない。  すぐ近くに黒い影が見える。獣に跨がった草原エルフェンの戦士が一目散に駆けて来る。構えた弓、鏃は真っすぐ彼を指していた。ハジは身構えた。彼の命を奪うであろう、断末魔の痛みに対する悟り。 「母さん、すまない……」
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