第2章 記憶

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真夜中、あたしは時計を見てる。 アンティークの置時計は、暗闇の中で月の光を反射して、時間を知らせる。 特別に硬くしつらえてもらったスプリングのベッドで、軽すぎて頼りないダウンキルトにくるまりながら。 壁際に置いた時計の針の動きを、ただじっと見詰めている。 短い針が2を、長い針が12を指す頃。 音もなく、ただ気配だけが、部屋にすべりこむ。 あたしは、少し身体を硬くして、ぎゅっと目を閉じる。 ゆっくりとあたしの後ろ側に横になる気配。 彼はいつものように、あたしを背中から包み込むように抱き締める。 左腕であたしを抱き締めたまま、左手の長い指が、髪をすく。 右手の指先がゆっくりと、あたしのナイトガウンの裾からすべりこみ、あたしの身体のラインをたどりだす。 熱を帯びた吐息が、あたしの内側の熱を呼び覚ます。 吐き気が… する…
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