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なんでか、分からない。どうして、あの子に手を差し出したんだろ。自分でも理解しがたい行動に自分自身がビックリした。
にしても、この少年。そうとう、皮作りができているなぁ…。こんなにできるのは、昔からあんまり話さない子供だったからという可能性がある。1日話さないとかそういうものじゃない。さぁて、この蜂蜜色の髪をもつ少年は、どうやって皮をかぶって近づいてくるんだろうか…。たまに、皮をかぶってない素のまんまの子がいるけど、人間なんて疑ってかかるべきなんだ。じゃないと、私がやられる…。人間は、みんな残酷で最低な奴なんだ。
そう考えていると、三橋が私に言いたそうな顔をしてきた。さすが…皮作りのスペシャリスト。自分からはしゃべらないで、相手を伺おうとする。さぁ、疑い合いの始まりだ。
「何?………み、はし君…だっけ?」
三橋「うん。…つ、いた…あの人…き、みに…当てた…。」
その指先には、何人かの男子が野球をしていた。どうも、あの子達は、私にボールが当たったことを知らずにいるらしい。はぁ…疲れた。もう家に帰ろう。疑い合いも楽じゃないんでね!
「ならいいや。好意的にぶつけた訳ではないみたいだし…じゃあ私はそろそろ…」
『帰ります』の単語を遮って一人の少年のこえが私たちに向けて発せられる。
「みっはっし―――!野球しよ―――ぜ!」
そばかすを鼻に散りばめた黒髪のちっこい奴が三橋に話しかける。三橋は、野球に誘われただけなのに、それをモノ珍しく見つめ、承諾している。これも、皮作りの一貫か?
三橋「で、も田、島君…、人、数あわな…い…。」
さっきのそばかすは、田島というらしい。コイツは皮作りしてないな。たんなる能天気といったトコだろうか?
田島「え―!?人数あわねぇ―の!じゃぁ……………君!入ってくれよ!」
「え!私?」
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