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私は知っている。知らず知らずの内に人をさし殺していることを。
ずぶずぶと沈みこむ先端は、相手の中を抉る。きっと辛苦の表情など歯牙にもかけず、いや寧ろ恍惚となる自分がいるかもしれない。
何故さした、と聞かれれば、安心するためと答える。しかし、実際殺した覚えはないから、何故殺した、と問われようと、それに答える術を持ち合わせてはいない。
勝手に死んでいた。
確かに私の一撃は、彼女を壊したかもしれない。けれど、それがどうした。結局、勝手に死んだんじゃないのか?
なんだ、その目。やめろ、悪しき双眸で、忌むべき物を見下すように見るんじゃない。
俺が何をした。
ただ、指差して笑っただけじゃないか。
それで勝手に傷つき自殺した。何であいつは死んだんだ? 自分の意思じゃないか。
あ……。
私の指先に爪。爪には首の肉。
自分と彼女は指にさされた。
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