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オレの家は江戸初期に建てられた古い家だとかで、確かに一般的な家より広くはあるが、どんどん建てられていく今時の新居に比べたら勝手が悪い。
床はぎいぎいと軋むし、風が吹けばガタガタと戸が鳴る。階段は一段一段が高くて、天井の染みだって年月の分だけしっかりとあるんだから酷いもんだ。
古い外観のせいで近所のクソガキに「侍の霊が出る」などと噂されているが、そんなもの生まれてこの方一度も見たことがない。
第一、見ていたらオレはダチの家を泊まり歩いていることだろう。完全なるデマである。
だが、そんな家に住んでいることを除けば、オレは何処にでも居るような至って普通の高校二年生。かっこ男かっこ閉じ。
ダチと馬鹿やってつるむのは楽しいし、程々に喧嘩もする。勿論、それなりにドジだって踏む。
そう、オレはただドジっただけなんだ。
新しいクラスにも落ち着いた5月。気が抜けていたのか、朝起きたら遅刻寸前だった。
こりゃヤバいと慌てていたもんだからたまたま家の階段を踏み外して、たまたま下まで転げ落ちて、たまたま気を失っただけ。
それだけだったはずなのに。
「…何処だよ、ここ」
目が覚めたら、まったく知らない場所に居た。ていうか寝てた。
あーあ、登校前だからオレ制服のままじゃん。このまま寝てただなんて制服が皺になる…って、そうじゃなくて。
マジで一体ここ何処だよ。
どうやら誰かの部屋みたいだが、置いてある物が今の日本じゃ使われてないような古い物ばかり。しかも単なるコレクションとかじゃなくて、ちゃんと使っているらしい。
…誘拐…とか?
いやでも、自宅の階段から落ちてのびてる奴を、わざわざ家に入るというリスクを犯してまで誘拐するか? 勿論、オレならしない。この案は却下だ。
ならなんでオレはここに居るんだ?
「…なんなんだよ…」
ああもう! 誰か五文字以上、十文字未満に纏めて簡潔に教えてくれ! 切実に!
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