何がどうしてこうなった。

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鳴き声を聞いた玄さんはそっと三味線を下ろして立ち上がり、鼻歌を交えながら戸口を開けに行く。 開いた戸口の先に品良く座っていたのは、さっき玄さんにミケさんと紹介された猫だった。 するんとしなやかな動作で中に入り込んだミケさんは玄さんを見上げ、にゃあ、とまた一つ鳴いた。 「ふふん、そうかいそうかい。ありがとうよ、ミケさん」 にゃあとしか言わない猫の言葉で何が分かったのかは知らないが、玄さんの声は上機嫌に弾んでいる。 玄さんはくるんっと回るように振り返り、まるで新しい玩具をプレゼントされた子供のようにどこか嬉々とした様子で、三味線を布に包み直した。 「さあーて仕事だ、仕事! 旭も来るかい? それとも他に行く宛が?」 紫色の綺麗な布に包まれた三味線をよいしょと背負えば、玄さんは何があったのか理解できていないオレを見て首を傾げた。 玄さんのことは、悪い人じゃないのかもしれないということくらいしか知らない。 ここが本当に江戸だというのなら、拾ってくれた恩人だとはいえ、得体の知れない人に着いていくというのはあまり利口な選択肢ではないのかもしれない。 だけど、知らない場所で一人にされるのは…情けない話だがすごく不安だ。 「…お願いします」 「そんじゃあまずはその着物だな。そのままじゃ目立ち過ぎてならないからねェ」 オレの返事を聞いて満足そうに笑う玄さんは部屋の奥に歩いて行き、ごそごそと中を探っていた箪笥から「あぁ、あったあった」と淡い青色の着物を引っ張り出して来た。 そしてそれをオレの頭にばさりと被せる。 「ほら、それに着替えな」 「着替えるって…」 …どうやって? 浴衣すら着たことがないんだから、着物の着方なんて知っているはずがない。 じいーっと着物とにらめっこをしているオレを見ると玄さんはぽりぽりと自分の頬を掻き、苦笑した。 「もしかしてとは思うが…着れない…とかかい?」 …すんません。
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