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17にもなって情けないが、呆れた様子の玄さんにすんませんと頭を下げて、その淡い青色をした着物を着せてもらった。
学ランの上に着物という妙な格好だけれど、慣れなていないが故に着物だけだと心許ないのだからしょうがない。
「まさか着物の着方すら知らないなんてなァ…一体アンタは何処から降ってきたんだい」
「あはは…どうもお世話かけました…」
自宅の階段からです、なんて言えるわけがない。
苦笑とも失笑とも取れるような笑いを溢したオレを気にすることもなく、玄さんは利口に戸口で待機していたミケさんを見やった。
「さてミケさん、案内頼むぜ」
にゃあ、と鳴いたミケさんがその場から歩き出すのを見れば、風呂敷らしい布に包まれた何かを手に持って玄さんはその後を追っていった。
玄さんのお古だという下駄を履いて、オレも外に出る。
「うわ…」
当たり前なのかもしれないが、目の前に広がるのはやっぱり見たことのない風景だ。
この道を生き生きとして歩いている人たちも、みんなそれぞれ着物や袴を着ている。
あぁ…本当に江戸に来ちゃったのか…。
なんだかオレ、少し場違いだ。
「おーい! なにやってんだい! さっさと来ないと置いてっちまうよ!」
いつの間にか立ち止まってしまっていたらしい。
声を張り上げてオレを呼ぶ玄さんが、少し離れた所でこちらに手を振っている。
にょあーん! とミケさんにまで呼ばれた(気がする)。
「いま行くー!」
慌てて追いかけていくと、オレが横に並んだことを確認した玄さんはニッコリと笑い、また先頭を歩き出すミケさんに着いていく。
…そんなこんなで野々村旭、17歳。
何故か江戸で拾われました。
ああもう…何がどうしてこうなったんだか。
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