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自分で言うのもなんだがエヴァンは村一番の魔技師だった、見えない目の代わりに魔力の流れを見ることが出来た
「これで大丈夫だ、でももぅこの映写鏡も古いからな…新しく出来ないの?」
見るからに古い映写鏡にはうっすらヒビすら見て取れた
「あいにく近境の村にはそんな有能な者はおらんからな、宮廷十二使徒にでも頼めればなぁ」
言いながら笑った、目の表情を変えずに鼻から下、口だけを器用に、長老特有の笑い方だ
「こんな田舎に十二使徒なんかが来る訳無いよ」
そういって笑い返した、
映写鏡が激しく光った、そしてすぐ本来の役割を果たして映写鏡は王都を映す…
継承の儀式はクライマックスらしい、丁度継承者が膝をつき王冠を被せてもらっている所のようだ
回りからは拍手や歓声が上がる
「今回の継承の儀式も無事…!?」
長老がいいかけた瞬間…
映写機の中の王都に異変が起こった
王冠を受け取った継承者は立ち上がり右手を前につきだしている、先程まで王であった者に向けて…そして一言呟いた…
“ありがとう…そして、さようならだ…”
そこで不吉な爆音と共に映写機が砕け散る
「ち…長老?これは?」
「だ、大丈夫じゃ!皆の者騒ぐでない!」
長老は無理やりに笑顔をつくって見せた
いつもの笑顔だった
それからすぐ村は火に包まれた身体が立っていられないほどの爆風と炎
そして逃げ惑う人々
エヴァンも意識を失う瞬間
誰かに手を引かれ空へと上がる
薄れゆく意識の中目の前には遠ざかる地上の長老の姿が見えた
いつもの笑い方だった
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