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頬に当たる冷たい無機質な感触。左手に握られたままの、少し黒ずんだ金属磨きの布。
ゆっくり上体を起こせば、案の定、背骨はポキポキと鳴った。何より痛い。座ったまま机に突っ伏して寝てしまっていたからだろうな。
――――銃の整備中だったか。
ふと窓の外を見ると、街の上に大きな満月が浮かんでいた。少し薄紫色になりつつある空は、もうすぐ朝が来るだろうという様子だった。
‥‥汗が気持ち悪い。ハイネックのノースリーブが特に背中にくっつきやがる。シャワーでも浴びるか。
椅子から立ち上がったとき、携帯電話が震えた。
電話だ。
「‥‥はい」
『よぉ、寝起きか?』
「当たり前だろ?まだ夜中の四時なんだから」
『それもそうだな』
そう言って軽く笑うなかなかの低めの美声の持ち主。
「‥‥なんの用だ、バズー」
『まあそう不機嫌になりなさんなって』
バズー、と呼ばれた男は尚も楽しそうに声を弾ませる
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