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ドゴォォォォン…
青年の視界に大きな爆発が映った。
40m程の火柱が戦場に一瞬で現れた。その火柱は形を崩し、上空から人間軍に降り注ぐ。
「凄まじいな」
炎は四方八方に広がり、人間軍の兵士を次々に呑み込んでいく。
「大将があそこにいるな。さて、行くか」
青年は思い切り地面を蹴飛ばし、炎が広がり続ける戦場へと飛び立った。
「はぁ…はぁ…、これで…何とか退けたか…」
ルクシルは膝に手をつき、前屈みになり、息を切らしていた。
魔力を一気に消費したがそれでないと人間軍の進攻は止められなかっただろう。
ルクシルの視線の先には炎に呑み込まれていく人間軍が居た。上空からの攻撃に対処しきれないようだ。
「よし…皆!追い討ちをかけるぞ!」
ルクシルの命令で兵士達が動こうとした。
その時だった。
「極法魔術(ごくほうまじゅつ)」
この声を鮮明にルクシルの耳は捕らえた。静かで、落ち着きのある声。
戦場の真っ只中でそのような声など耳に入るのはおかしいことだ。
しかし声の正体が分かっていたルクシルには何ら不思議ではなかった。
そして形勢逆転を予期した。
ゴゴゴゴゴ…
急にルクシルの眼前の地面が割れ始め、浮き上がり始める。
その現象は広範囲に渡って見られる。丁度炎が広がっている範囲くらいだろうか。
燃え上がる大地は地上から500m付近まで舞い上がる。もちろんその中には生きている人間軍の兵士もいる。
ピシッ…ピシッピシッピシッ…
岩が徐々に砕ける音と共に空に舞い上がった地面は燃えている表面を内側とし、丸くなり始める。
みるみるうちに炎は内側に閉じ込められ、巨大な岩石球体と成り果てた。
「ちっ…さっきの大軍は囮か…」
ルクシルは悔しさのあまり下唇を噛む。犠牲をいとわぬ狡猾な戦い方。戦争ではその方が正しいのかもしれないが。
どのみちこんな戦い方をするやつは1人しかいない。
ルクシルは先程の出来事で大きく削りとられた地面を見、そしてその更に奥を見る。
そこには先程と変わらない人間軍の大軍が見える。
そしてその先頭に最大の敵、人間軍2代目大将 ヴァイス=マリアントは居た。
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