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「で、出やがった…人間の王が…」
ルクシルの後ろの兵士達もヴァイスの姿を確認したのか、恐怖混じりの動揺を露にしている。
そしてその動揺は兵士の闘志を蹂躙しながら兵士達に広がっていく。
「(まずいな…。兵士達の士気に関わる状況だな…。
実際、俺だって魔力を消費した上に、あの大軍を見せられちゃ、折れるぜ…)」
精神的に満身創痍のルクシルもなんとか闘志を繋ぐので精一杯だった。
だが人間軍の更なる追い討ちがかかる。
「ルクシルゥ!!聞こえてるかァ!?」
怒号が響く。声の持ち主はヴァイスだ。
「今からあの球体を貴様らの頭上から落とす!!」
この言葉に魔人軍に激震が走る。直径約1km程の岩石球体を落とされたでもしたらひとたまりもない。
少数の魔人達は我先にと避難を始める。が、無駄だと分かっている兵士達は動こうとせず、項垂れている。
ルクシルも額に汗を伝わせ、悔しさに顔を歪めていた。
「ただし!!降伏すると言うのなら、岩石は落とさない!!」
ルクシルはヴァイスがこう言うことは予測していた。最悪の選択だ。
「さぁ!どうする!?まぁ、降伏しても命は保証しねぇがなぁ!!!」
まさに外道極まりない奴だ。ルクシルは内心そう確信すると否や、すぐに言葉を吐いた。
「降伏はしない!!俺達が負けるのは全兵士が力尽きた時だ!!」
降伏してもどうせ殺されるのだ。それならばこの選択の方が断然、利口な気がした。
可能性が尽きるまでは諦めない。いつもそう決めている。
ルクシルは後ろを確認する。そこには吹っ切れたのか、ルクシルの言葉に背中を押されたのか、決意を決めた顔をした兵士達がいた。
「お前ら、最後まで気を抜くんじゃねぇぞ!!」
オォォォォォォォォォ…!!
闘志を取り戻した兵士達の雄叫びが戦場を震わす。
「ふっ…、魔人も今日で終わりだぁぁぁぁ!!!」
オォォォォォォォォォ…!
ヴァイスの怒号が人間軍の兵士達の雄叫びを煽る。
両軍の雄叫びが中和した時、岩石球体が動き出す。
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