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魔人軍の兵士が敗北と死を覚悟した時、それは起こった。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
まずは大地を震わす程の怒号が響き渡る。
そして何かが岩石に斜め右下から、物凄いスピードで突っ込んでいった。
これを目撃した者は少ないが、次の衝撃はルクシル、ヴァイスを含む大多数の兵士の目に映った。
ゆっくりと移動していた巨大な岩石球体が再び空へと押し戻されたのだ。
その場にいた全員が目を疑った。その光景はどう見ても異様にしか見えないからだ。
「な、何が…!?」
ルクシルとヴァイスは口を揃えて同じ言葉を口にした。皆の視線が上空へと押し戻された岩石球体へと集中する。
「ひ、人がいるぞ!」
魔人軍の兵士達から声があがる。ルクシルは岩石球体の表面を凝視しながら、辿っていく。
そしてその姿を捉えた。
黒い装束の青年が岩石球体の右側面に取り付いている。
そしてその青年は岩石球体の表面に思い切り拳を叩きつける。
ボコォッ…
拳を叩きつけた場所が大きく陥没する。しかしこれで終わらなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…
岩石球体は軌道を左上方から左下方へと変え、地面へと落下していく。
ゆっくりとしたスピードで誰もいない地上へと落下する岩石球体。
それを見ていたルクシルの側に岩石球体の軌道を変えた青年が降り立つ。
「あなたが魔人軍2代目大将ですね?」
青年は大将と話すのに関わらず、ごく自然に話す。その雰囲気に圧倒されながらもルクシルは答える。
「あぁ。しかし、君は何者だ…?あの岩石をパンチで軌道を変えるとは…」
「深くはおっしゃれませんが、1つ言うなら、僕はあなた方の仲間ではないです」
「仲間ではない?ではなぜ我々を救ったのだ?」
「正確に言いますと、仲間ではないですが、あなた方を守ります」
何を言っているのかは理解しかねるが敵意はないと判断するルクシル。
青年はルクシルからヴァイスへと視線を移し、再び話し始める。
「今から人間軍を退けます」
「……は?」
予想外の発言に呆気にとられるルクシル。
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