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「だから人間軍をここから出し、人間界に追い返します」
たんたんと話しを続ける青年の横顔を見つつ、ルクシルは思考する。
「(この青年の強さは確かだ…。しかし、この青年を戦力に合わせたとしても人間軍に敵うかどうか…)」
青年が戦場に加わったことで少しの希望が見えたかと思えたが、人間軍の数は多い、物凄く。
それに大将のヴァイスはルクシルと渡り合える、いやそれ以上の力を持っている。
以上のことからルクシルには勝機が見えなかった。
「違いますよ」
黙っていた青年が急に口を開いた。
「何が違うんだ?」
ルクシルが応える。
「今、あなたは僕と魔人軍で人間軍に敵うかどうかと考えていたみたいですが、そこが違います」
「つまり…仲間が来てるとかそういう意味か…?」
「いえ、違います。人間軍と戦うのは僕1人です。言ったでしょう?仲間ではない、と」
この発言に思わずルクシルは首をかしげてしまった。
青年は1人であの大軍の中に突っ込むと言っているのだ。
ルクシルからすれば、殺してくださいと言わんばかりの行動だ。
未だに青年の考えがルクシルには読めなかった。
「もし、あなた方が僕に加勢したならば僕はあなた方も敵と見なします」
青年の更なる困惑を誘う発言にルクシルはまたも呆気に取られた。
「ちょっと待て!本当に1人で戦うのか!?」
核心に迫る質問を青年に投げ掛ける。
すると青年は悲しさがひしひしと伝わってくる顔をしてうつ向いた。
「もう命が無駄に消えていくのに耐えられないんです、僕は…」
びりびりとルクシルの頭に響いた。反響を繰り返し、消えていく。しかし、この言葉を聞いたルクシルの衝撃は消えなかった。
「(この青年……、意志が強い…。だが、しかし…この青年だけを戦わせるわけには…)」
ルクシルは困惑していた。青年に頼るべきなのか、否か。
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