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復旧作業に従事するエッジ
使い方は何も人を殺すだけではなく、こういった使い方も出来なくは無い。
だが、結局は今の人間には兵器としての使い方しか受け入れられないだろう。
「ここが我々の母港に…。」
「何か思う所でも?」
新田は懐かしむように目を細めた。
「じいさんが昔漁師でした。」
新田の祖父はケケ島付近を拠点にする漁師だった。
前大戦から帰還した彼の祖父は漁師として仕事を再開した。
だか、ケケ島は戦勝国を名乗る粟菜によって占領されていた。
抗議活動を続けながら漁を続ける彼の漁船に悪意を持った粟菜の貨物船が激突。帰らぬ人になったのだという。
貨物船は救助をするどころか空き瓶を投げつけていたと同僚がいっていたそうだ。
「親子もまだ若くてね。仕方なく越後の大叔父を訪ねたんだ。いい人でね。戦争で亡くした妻娘のように手を焼いてくれた。私も世話になったよ。酒を呑むと二人で祖父の話しをするんだ。あぁ。じいさん。今俺は…。」
言い終わらずに声が湿っぽく、嗚咽が混じり始めた。
悟られぬように、静かにその場を後にした。
平和とは、平和なのではなくて、闘争から目を背け、逃げているだけなのかもしれない。
「准尉。エッジはどうしますか。運び出しますか。」
「外に出した所で整備施設は無い。ある意味マンタの中が一番安全だ。いずれ本隊から整備施設用の機材が届くだろう。それまで待機だ。」
「了解。反射するほど磨き上げておきます。」
報告書かかねぇとな。
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