戦後

2/3
48人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
C.C.2008.1209 その日大和海は平穏だった。 冬にしては珍しい。 地球温暖化はこんな所にも影響しているのだろうか。 平和を尊ぶ我が国に相応しい天気だ。 ちぐはぐな空気がよく似合う。 防衛官“松原 一”は久しぶりの外出に海を見に来た。 南部連隊御岳大隊教育隊三等陸防曹 彼の肩書きはこうだ。 外国的に言えば陸軍三等軍曹となる。 大和国防衛技術大学卒業のち配属。 部隊への転属か技術部への配属か未だ決めかねている。 「さて、どうするか」 宿もとい出張先の基地に戻るか、街でもぶらつくか。 街を歩いた所で豪雪地域である。 まして田舎だ。 基地の方が娯楽になる施設は多い。 彼はただ海を見に来ただけなのだ。 子供の頃から悩むと海を見たくなる。 ただそれだけなのだ。 「……哨戒艇!?…哨戒機も」 不審船でも出たか そう思い基地へ続く雪の谷間を歩いていく。 陸軍陣営は多少ばたついていた。 未確認飛行物体が接近中なのだそうだ。 ミサイル形状だという。 ならミサイルなのだろう。 北粟菜の軍事演習だろう。 この寒いのにご苦労な事だ。 案の定ミサイルは境界線上で爆散した。 放たれた矢は一本。 そしてメディアは粟菜書記長王 湾候の死を伝えた。 あのミサイルは後継者の王 湾恵のデモンストレーションに違いない。 そう書かれていた。 問題は、だ。 ミサイルの爆散地点は国内か否か、だ。 それだけで動く金が億単位で変わる。 日出新聞は粟菜国内だと主張し、メディアの意見は別れた。 まあ、日出の言う事など今の御時世誰も信じないが。 国会は緊急対策委員会を召集。 ギニアス合衆国の言うミサイル防衛網の強化と防衛費の一部増額を決定した。 北粟菜を抗議し、連邦議会にて決議を要請した。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!