第四章 襲い来る堕天使の翅

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  十五ミリ機関銃の斉射を受けたマダの核から、無数の波紋が浮かび上がって、その中心点には機関銃の弾丸が、白煙を上げながら静止していた。 物理的な攻撃を反射させる結界……マダの核が形成させた波紋を視認したキルケは、慌ててシートの脇に付いたレバーを上げて逆噴射を行い、マダの核から距離を取る。 「──うむ。自殺行為だヨ」 「だから、それを先に言えーッ!!」  十五ミリ機関銃から発射される弾丸も当然、実体弾であり……物理的な攻撃に当たる為、幾らマダの核に向かって撃ち続けても、それを反射する結界を張られては逆効果でしかない。  逆噴射を行って姿勢を正し、上空に逃げるガーゴイルⅡを狙って、マダの核は反射結界を解除し、静止させていた機関銃の弾丸を纏めて一度に跳ね返した。 「うわああーっ!?」  発砲時の推進力を保った状態のまま機関銃の弾丸は上方へと反射され、ガーゴイルⅡに向かって飛び込んでくる。 軽い衝撃音を立てて銃弾は機体を掠め、キルケは飛行機関の搭載された両翼部と操縦席への直撃を避ける為、機体下部をマダの核に向けて目標からの反撃を耐え抜いた。 「機体損壊率、十二パーセント……よくもやってくれたわね」  下界に根を張るマダの核を恨めしそうに見つめ、キルケは足元にある二つ目のペダルを踏み、下部の姿勢制御用スラスターを噴かせて再度態勢を立て直す。 「──マダの核が持つ唯一の弱点ハ、魔力エネルギーを用いた攻撃へ耐性を持たない所にアル。純粋な魔力エネルギーを攻撃に応用させた武装を持っていないのでアレバ、撤退する事をお勧めシヨウ」 「だからさあ、何度も言う様に。そういう重要な事は、一番最初に言いなさいよね……」  魔導技研の御粗末な対応を受けて、怒り心頭となりながらもキルケは目標の弱点を理解し、シートの脇に貼り付けていたメモを一瞥して、操縦桿の間にあるディスプレイを覗き込む。 「魔力電源の残量は五十パーセント。勝負は一発ね……」  眼下にいるマダの核を睨み、キルケは操縦桿の脇から引き金(トリガー)が付いたグリップを引っ張り出す。上部から赤と黄のコード線が伸びて、操縦桿の真下へ繋がっていた。 魔術式集束型波動砲。 整備班の話を訊く限り、其処から発射されるのは、純粋な魔力エネルギーの波動。 即ち……マダの核の弱点である攻撃手段だ。 「これが波動砲の引き金か。まるで昔のアニメみたいね……」  
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