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通信機から耳を離し、キルケも操縦桿を両手に握ったまま、流れていた音声について考え込んだ。
「一体、何だっていうのよ……」
マルバスは対面していた何者かの事を、堕天使の翅(フォーリン・エンジェルズ・フェザー)と呼んでいた。
つまり、本部施設を襲撃した兵士達と何か関係しているのだろう。
幻術結界を生み出す装置“マダの核”を市ヶ谷記念館に仕掛け、此方を混乱させたのも奴等の仕業か。
だとすれば、本部施設を襲撃した奴等の目的は何だ……。
考え込むキルケの脳裏を、上條や他の重役達との会議の中で得た情報が飛び込んだ。
新宿区歌舞伎町で発見されたという二つの秘宝。
其処から考えられる敵達の目的は大方一つしかない。
「……まずい。早く引き返さないと!」
足元のペダルを踏み、片方の操縦桿を左に倒して、ガーゴイルⅡを低空で旋回させると、キルケは記念館から本部施設や魔導技研のある方角へ引き返す為、操縦席のハッチを閉めた。
「えっ?」
向きを変えて、市ヶ谷記念館から飛び立った直後、レーダーが発光し警報音が鳴り響く。
上方より一点、魔人特有の魔力反応が見られ、此方に向かって急速に接近してくる。
「マダの核をいとも簡単に撃破してみせるとは……面白い奴だな」
「何……!?」
「その技量や戦力も、我々にとっては不都合な物だ。此処で消去してやろう」
操縦席を覆うハッチの上に、緑の肌を有する一つ眼の魔人が立ち、悪どく笑みを浮かべてキルケの顔を見下ろしている。
いつの間に最接近されたのか……焦りの表情を見せ、相手を振り落とそうと操縦桿を動かす彼女へ、魔人は両手から黒色のオーブを顕現させて、それをハッチの上へ力強く叩き付けた。
「うわああっ!」
爆弾の様に黒色のオーブがハッチの上で炸裂して、操縦席を覆う特殊硝子が砕け散り、姿勢を保てずガーゴイルⅡは記念館近辺へと落下する。
敵の攻撃と落下の衝撃を受け、キルケはディスプレイの上に顔をぶつけた。
「くうう……!」
苦痛に呻き声を上げつつ反撃に出る為、太股のホルスターからグロック一七を引き抜き、破損したハッチを抉じ開けて、キルケは赤く腫れた鼻を抑え、外界へと身を乗り出した。
「このっ……何処へ行った!?」
市ヶ谷記念館周辺の広場。ガーゴイルⅡの周りに先の魔人の姿は見えない。
ガーゴイルⅡの欄干を下り、キルケはグロック一七を両手に握り締めて敵を探す。
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