第四章 襲い来る堕天使の翅

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  今、こうして長剣から放たれる電流も拡張された機能の一つか。 魔導ジェネレータのみならず、キルケ自身が体得している技術(クラフト)とも連動し、ラスタバンは更なる力を発揮した様だ。 「……この引き金(トリガー)こそが、剣の力を引き出す為の起動スイッチって所かな」  グリップと鍔の間に着いた銃器の物に似た引き金へ、自身の指が掛かっていた事を認識し、キルケは脂汗を拭い電流の放たれる魔導剣を地面から引き抜き、大きく横一文字に素振りを始める。  しなりを上げて空を切り、剣身から白い電流が遠方に向かって放たれた。 稲光が辺りを包んで、白い電流はガーゴイルⅡの前で忽然と姿を消す。 「やれやれ。乱暴なお嬢さんだ」  轟く雷鳴と共に一つ眼の魔人が、ガーゴイルⅡの直ぐ隣……煉瓦張りの地面から這い出て、恭しく両手を叩きながらその姿を現した。 白い雷を浴びたのか、彼の肉体から細かい電流が走り、地面に向かって流れていく。  やがて彼女の手に握られたサンライトイエローの魔導剣に目が止まり、魔人は感心した様に軽く息を吐いた。 「ふむ。その長剣は一体何だね。強い魔力が此方の肌に伝わってくる様だが……」 「……そうね。この剣に名前を付けるなら──」  余裕の表情を変えない魔人の顔を見つめ、両手に持った魔導剣を脇に構えて両足を広げ、キルケは鋭く瞳を輝かせつつ、魔人の問い掛けに大きな声で答えた。 「──魔導雷撃剣。“ラスタバン・ブロンデー”……って所かしらね!」  回答と共にキルケは手にした魔導剣を右斜めに振り上げた。 サンライトイエローの刃が空中を走り、切っ先から電流を帯びた白い剣風が放たれて、一つ眼の魔人に目掛けて飛来する。  両手を広げ≪詠唱≫を唱えて、自身の正面に朱色の障壁を作り、魔人も剣風に備えて防御体勢を取った。 朱色の障壁に白い剣風がぶつかり、激しく雷鳴を響かせながら剣風は障壁の前で掻き消える。 それと同時に発生した強烈な閃光が魔人の周りを包み込んだ。 「ぬう……」  閃光を受けて目が眩み、その場に立ち尽くした状態のまま、魔人は両手を下げ精神を集中させて、別の幻術を起動させる為の≪詠唱≫を唱え始める。 魔導剣から放出される稲妻を利用して、此方の視力を奪う戦法に出たか。 「……だが、目を潰した程度で有利になったと思うな」  敵の気配と魔導剣から放たれる魔力の反応も、此方に向かって接近してくる。  
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