第四章 襲い来る堕天使の翅

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  脇に構えていた魔導剣を前面へと押し出し、キルケはグリップの引き金をそっと指で引いた。 軽快な電子音とモーター音を響かせ、柄に巻きついた白と灰色のコード線が発光して熱を持つ。 更に輝きを増したサンライトイエローの剣身から無数の光芒が放たれて、電熱に因って周りの空気が大きく音を立てて振動を始めた。  無言で魔導剣から放たれる膨大な魔力エネルギーを凝視しつつ、一つ眼の魔人も両腕を広げて、朱色の障壁を自身の前面に展開した。 防御行動へ全力を注ぐ相手を見つめて、キルケは両手に持った魔導剣を振り上げ、魔人の脳天を叩き割る様、縦一直線に剣を振るい煉瓦張りの地面へ、雷の迸る切っ先を叩き付ける。  魔導剣から放出された魔力エネルギーが電流を帯びた衝撃波となり、煉瓦を砕き散らし地面を激しく揺るがせながら、相対する一つ眼の魔人に目掛けて猛進する。 「おお……!」  感じ取った強い魔力の波動に魔人も嬉々とした歓声を上げて、朱色の障壁を衝撃波に向けて翳し、キルケの攻撃を防ぎに掛かった。煉瓦の破片を周囲に散らしながら、衝撃波は魔人の周りを取り囲む。 舞い飛ぶ土煙の中で黄色い電流が流れ、朱色の障壁から火花が上がる。 「何だ、こんな物か……!?」  ラスタバン・ケラヴノスから放出された衝撃波も、朱色の障壁を打ち破る程の破壊力を持っていない。 あれだけの魔力エネルギーを溜め込んでおきながら、児戯(じぎ)にも等しいちゃちな攻撃を受け、一つ眼の魔人は憤慨した様に声を荒げた。 「こんな物で、この私を屠る(ほふる)つもりとはな。笑わせてくれる!」  電流を帯びた土煙を払う様に右腕を振るい、一つ眼の魔人は魔導剣を携えたキルケと対面する。 衝撃波とそれが生み出した土煙へ気を削がれている間に、彼女は稲妻を疾らせる魔導剣を上段に持ち構え、此方へと駆け寄って来る。 「いっけええええッ!!」  修羅の様な表情を見せ、喉を裂かんばかりの雄叫びを上げながら眼前に迫り来る敵を見据えて、一つ眼の魔人は透かさず両腕を魔導剣の前に翳し、朱色の障壁を楯にして彼女の斬撃に立ち向かった。 「そうか……それが御前の“策略”か!!」  最初に放たれたあの衝撃波は只の牽制。此方を油断させ、土煙で動きを止める為の初手でしかない。 真の攻撃は衝撃波の次に、相手へ直接叩き込む雷霆を纏った必殺の斬撃か。 ……期待も外れてはいなかった様だ。  
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