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次第に落ち着きを取り戻したマリアの質問へ、アンドラスは事務的に回答を行った。
その後、彼は視線を落とし自身の傷を一つ一つ確認していく。
「……戦いもこれで終わったのかな」
市ヶ谷一帯を覆っていた幻術結界も消えて無くなり、女性魔人も老人もこの場所から姿を消している。
もう敵も現れない筈だ。
安堵の息を吐き、マリアは風の力……≪フュージョン・ウインドー≫を消して、アンドラスの傍に寄り添う。
「もう少し早く来ていれば、酷い怪我を負わせずに済んでいたかもしれないのに……」
ナオ先生に余計な迷惑を与えた上、黒髪の少年の言葉に惑わされたせいで、二人を危険な目に遭わせてしまった。
自責の念から頭を下げるマリアの顔を見つめ、アンドラスは無表情のまま黙々と自身の意思を彼女に伝える。
「この程度の怪我だ。主人が気に止む必要も無い」
「この程度って……腕と足が無くなってるじゃないですか……」
目を伏せ、マリアは彼の傷から視線を逸らす。
右腕と左足を切り落とされ、右足も魔力の奔流に依って奪われている。
……どう見ても“この程度の怪我”で済まされる物じゃない。
マリアの心配を他所に、アンドラスは≪詠唱≫を唱えて黒刃の剣を体内へ収納して、マリアの顔を見つめ続けた。
「失われた部位も再生させればいい。その為の手段も充実している」
「手段って……どうすればアンドラスさんの身体は元通りになるんですか?」
「魔導技研に四肢の複製と移植を頼む。それだけだ」
「あらあら。それでは料金は貴方持ちで御願い致しますわね」
主人を安心させる為に怪我の治療方法について語った所で、サブナックのダウンジャケットを羽織った五稜ナオが二人の前に姿を見せた。
彼女の後ろには、何時の間にか合流したサブナックとゴモリーの姿も見える。
「昔の誼(よしみ)だ。移植なら俺がやってやろう。これならお前の負担も少しは軽くなるだろ」
スラックスのポケットに両手を突っ込み、サブナックはナオの隣に並び立ち、座り込んでいるアンドラスへ手を差し伸べる。
彼の行動を無視して、アンドラスは左手で右腕を庇い、両目を閉じて黙りと決め込んだ。
「サブナックさんにゴモリーちゃん……何時の間に?」
ナオの隣に立つ二人へ目配せをして、マリアはきょとんとした表情のまま、何時の間に彼女と合流したのか……と、そう問い掛けた。
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