その1.僕を選んでくれてありがとう。

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梨花と別れて1人家路を歩く。 いつものように緩い上り坂を登れば、見慣れた我が家が見えてくる。 玄関まで来て鞄の中から家の鍵を探していれば、ガタリと確かに家の中から物音がした。 「……」 …なんで? 誰もいないはずなのに聞こえた物音に眉をひそめた。 まさか…泥棒? 緊張で早鐘を打つ心臓に手を添えながらも、ドアのぶを握りゆっくりと回す。 ガチャリ、 いつもより控えめな音を立てて、玄関のドアが開いた。 そっとドアを開いていけば露になる玄関。 「……ん?」 そこで、ふとあることに気付いた。 「……この靴…」 どこか見覚えのある泥まみれのボロいスニーカー。 恐る恐る家の中へ入り、その靴をまじまじと見てみた。 普段置いてあるはずのない靴。それが今ここにあって…鍵をかけたはずのドアが開いていて…… 「……まさか…」 冷静に考えて思いあたる節はひとつしかない。 慌てて靴を脱いで早足に廊下をずんずん進む。 まさか…まさか…!! リビングのドアを勢いよく開けた。
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