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「平和主義も度を越すとただの狂言だろう?争いは必要だ。競争がなければ、進歩など有り得ない。自身の立場と有為を保持する為に、策略を展開する――それを怠った瞬間から、人は後退して行くんだ。普通過ぎることは普通ではないんだよ。何事も、程々が良い」
「……僕は、その『程々』って奴のつもりですけどね」
勿論のこと純度嘘百パーセント。
流石に強がってみたけれど、僕には格好を気にするような陳腐な美意識は既に無い……でもないので、今こうやって虚勢を虚言と評しているわけですが。
僕の見解や思想や言動には根元のところで、いつも曖昧に靄がかかっているから、これといった後ろ盾もなく、苦言を訂されたところで――正論で否定されたところで、それこそ根底から崩れることはない。
要は保険だ。
或は――保身。
僕は、臆病だからね。
所詮は苦し紛れの言い逃れである事には違いない。確実な逃げ場の無い現実で外堀を固められる前に、こんな気持ちの悪い会話は、できれば早々に切り上げたいところだ。
こんな。
ぐちゃぐちゃな。
気味の悪い。会話は。
「……ふふ、君がそう言うなら、きっとそれはそうなのだろうね。よしんば違っていたとしても、思い込んでしまえばそれまでか。パーソナルリアリティの押し付けは良くないからね、悪かった」
オッサンのたわ言と思って、聞き流してくれて構わないよ。
彼は、まるで僕の返答を咀嚼し楽しむように、再度方向性の見えない不愉快を押し付けるような表情で、そう言った。
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