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――暗い。
ここは食われて。
喰らわれていた。
景色を欠いた暗闇の中、色彩という色彩が、それをあらゆる面の積極的な意味で形容するまでも無く、希望的観測を抱く意識すら与える事も無く――ただ、喰い潰されたように、暗い。
さらに言えば、情景に限定されず、それらの意味は作用していた。
此処という、確かに存在する世界に、まるで共存関係を拒否するが如く孤立した――たった一つの何かが鎮座していたから。
それは、孤独ではない。
現状からの脱出を放棄したように、その表情に酷く生命力を帯びていない少年は……独り、外界から閉ざされてはいなかった。
――それでも。
眼を閉じていた方が、救われる程に。
眼を開けていられない程に、その一片の希望さえ残されていないとまで思えるような、切り離された別空間の中で。
ふたりぼっちは、今日も失い続けた。
「……やっぱりね」
「……うん」
「宛てが外れたね」
「所詮は淡い期待だったんだ。希望は果てしなく硝子細工のように脆く、限りなく水面のように歪曲する――とかさ、何処かの誰かさんが言ってた気がするよ」
「それ僕だぜ?」
「違うよ……無意味な嘘は付かないでよね」
冗談めかした会話の渦中にいながら。
笑えない冗談のような――夢想から作り上げられたものであることを切に願うことでしか光が差し込む余地もない現実に、僕達は背中を合わせていた。
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