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「嘘もつくさ」
「欺瞞の対象を無差別化するのは、その場凌ぎにも一時療法にもならないよ?」
「仕方ない。それは本当に仕方ない……それが、裏切りに対して最も有効な免疫機能であり耐性であり、何より鎧だからね」
「最後の砦でしょ」
「…………」
「或は最後のプライドかな?」
「プライドなんてとっくに捨てたよ。笑いたきゃ笑え」
「笑わない。生きることに執着している何よりの証明だからね」
言葉に反して君は苦笑し、鎖に繋がる手錠が嵌められた手首を一瞥する。
「「望みなんて叶わない。願いが成就するなんて言うのは所詮、僕達の因果から外れた夢想するだけ無駄な夢物語だ」」
そんなことは、分かっているつもりだった。
無価値と認識してしまっている世界の中で、何かを望む事は余りにも無意味だ。そんなことは分かり切っていた。遠い過去に、昨日のことのように思い知らされていたから。
だから。
無意味の無差別な集合体であるこの世界に生まれ落ちた僕達も、所詮は存在の有無が何にも関与しない、副産物の一断片にすぎないのだろう。
世の全てが無為に還元されるであろう、そこにあるというだけで恵まれた世界。
そこに存在したとしても、僕らは変われないのかもしれない。
僕達は、世界に還元されるまでもなく――人として、生命として、本来備わっているはずの前向きな《意味》を、剥奪された存在なのだから。
全く、本当に笑えない。
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