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現在7月の中旬。
今年の3月下旬辺りから、東京23区内で16件の連続窃盗事件が発生していた。
「倉さん! 鑑識の報告だと玄関のドアや浴室周辺には家主の指紋以外見つからなかったそうです。
ピッキングの跡やベランダから侵入した形跡もなく、置いてあった犯行カードにも家主の指紋以外はありませんでした。
家主の話と犯行の手口、カードを置いている状況から奴の仕業に間違いないと思われます」
「これで17件目か。全く煩わしい奴だ」
若い刑事が鑑識からの報告を『倉さん』と呼ばれるベテランの刑事に報告すると『倉さん』は家主の元へ向かった。
ここは東京の新宿、とある高級マンション7階の一室。
家主から窃盗の110番通報を受け、近くの交番から2人の警察官が事情を聞きに来たが、犯行カードの存在から大掛かりな捜査が行われていた。
被害者の家主はホストクラブで働く20代後半のホスト。
客と会う予定なのか高級ブランドスーツをビシッと着込んでいる。
顔はなかなかのイケメンで見た目や仕草はいかにもホストという感じの男だった。
ある一部分を除いてだが‥。
「もう一度確認するが、いつ盗まれたんだね?」
俺はリビングのソファーで困り果てているこの部屋の家主に詳しい事情を聞いた。
「さっきも別のお巡りに言ったけど俺が風呂に入っている間だよ」
家主は面倒くさそうに答える。
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