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逆さ吊りの男
大学が決まって、引っ越すことになった。
部屋を探していると、格安のアパートが見つかった。
駅から近くてユニットバスもついて2万ポッキリ。
友達に話したら
「おまえそれ絶対いわくつきだよ、やめなよ」
とかいわれたが、オレはそういうのみないし、ちょっと変な音がするぐらいなら安いほうがいい。
金縛りには昔からなるしなぁ。
ある日、部屋を歩いてたら何か頭の辺りにさわさわ感じた。
おー、やっぱ何かあるのかな?
またある日、こんどは明らかに何かが頭に当たったような気がした。
「?」と思ってその辺りでさわろうとしたが何もない。
気のせいだな。
その部屋に来てからとくに何も起こってない。
いわくつきとかそんなのを気にしないで越して来てよかった。
そんなことがあってしばらくして友達が遊びにきた。
部屋でゲームをしてると、そいつの視線が時々あらぬ方向を彷徨う。
こいつ、いわゆる”見える”体質なのかもしれんが、そいつの視線のほうがちょっとキモい。
そのうちそいつがいきなり、ふらぁ~っと立ち上がった。
「どうしたお前。」
「腹減っちまった。ファミレスでも行かねー?」
「んじゃスカイラーク行くべ。」
ファミレスに入ってテーブルにつくと、そいつはメニューも見ずに顔を寄せてきて、小さな声で言った。
「お前あそこ出ろよ。天井から男が逆さまにぶらさがってて、そいつの真っ白な手がロープ握り締めてるの見えんだよ。
お前いつか吊られるよ?」
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