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先輩が呟いた通り、モニターからは女の人の姿は消えていた。
後輩の心中にほっとしたものが広がる。
よく確認しようと、先輩の横に顔を乗り出した。
その時。
「待て、動くな」
先輩が突如、押し殺した声を出した。
は?
と思ったが反射的に従う。
二人は、モニターを覗き込んだ格好のまま固まっている。
「いいか、絶対に今振り向くなよ」
先輩が押し殺した声で言った。
何でだろうと思った後輩だが、モニターをじっと見てそれを理解した。
画面の反射で、自分の顔と先輩の顔が映っている。
しかし、その真ん中。
もう一つ、女の人の顔が覗き込んでいたのだ。
悲鳴をこらえ、後輩はまさしく硬直した。 じっと耐えること数分、その女は
「…………」
と何事か呟くと、すっと離れた。
そしてさらに1分。
もういいぞ、と言われて後輩はやっと息をついた。
恐る恐る振り向いても、誰もいない。
どくどく脈打つ心臓を押さえ、後輩はモニターから離れた。
「ここって、なんかでるんやなぁ~」
先輩は感慨深げに呟き、後輩のほうに同意を求めた。
「そうですね」
と、先輩を振り方を向いて、後輩は再び硬直した。
その視線をたどった先輩もモニターのほうへ向き直る。
そこには、さっきの女の人が。
しかも今度は、
カメラの方を向いて大口を開けて笑っている!!
もう二人は何も言わなかった。
何も言わず、某ソンを裏口から飛び出したと言う…。
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