逆さ吊りの男

1/1
前へ
/110ページ
次へ

逆さ吊りの男

大学が決まって、引っ越すことになった。 部屋を探していると、格安のアパートが見つかった。 駅から近くてユニットバスもついて2万ポッキリ。 友達に話したら 「おまえそれ絶対いわくつきだよ、やめなよ」 とかいわれたが、オレはそういうのみないし、ちょっと変な音がするぐらいなら安いほうがいい。 金縛りには昔からなるしなぁ。 ある日、部屋を歩いてたら何か頭の辺りにさわさわ感じた。 おー、やっぱ何かあるのかな? またある日、こんどは明らかに何かが頭に当たったような気がした。 「?」と思ってその辺りでさわろうとしたが何もない。 気のせいだな。 その部屋に来てからとくに何も起こってない。 いわくつきとかそんなのを気にしないで越して来てよかった。 そんなことがあってしばらくして友達が遊びにきた。 部屋でゲームをしてると、そいつの視線が時々あらぬ方向を彷徨う。 こいつ、いわゆる”見える”体質なのかもしれんが、そいつの視線のほうがちょっとキモい。 そのうちそいつがいきなり、ふらぁ~っと立ち上がった。 「どうしたお前。」 「腹減っちまった。ファミレスでも行かねー?」 「んじゃスカイラーク行くべ。」 ファミレスに入ってテーブルにつくと、そいつはメニューも見ずに顔を寄せてきて、小さな声で言った。 「お前あそこ出ろよ。天井から男が逆さまにぶらさがってて、そいつの真っ白な手がロープ握り締めてるの見えんだよ。 お前いつか吊られるよ?」
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

229人が本棚に入れています
本棚に追加