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しばらく久美ちゃんと戯れていたら本日三度目のチャイム音。
「噂をすれば、だね」
どうやらまだ見ぬ家族が到着したらしい。体が無意識に反応した。
久美ちゃんはベッドに座り直し、胡座をかいて膝の上に僕をのせた。その間に階段を上がってくる足音が聞こえてきた。
その音が大きくなるにつれ、僕の鼓動も急上昇。予め知ってるっていうのも緊張するものなんだよ。
足音の主は玄関(このフロアが居住スペースだからそう呼ぶことにする)を慌ただしく開けると、寄り道せずにこの部屋に向かってきた。
なんで見てもいないのにそんなことが分かったかって?なんたって僕は耳がいいからね。それに扉から出て来た男の子の息が上がってたもの。
「アメはどこ?」
いつの間に僕は有名になったのか。
「ノックくらいしなさいよね。着替えしてたらどうすんのよ」
久美ちゃんは苦笑しながら僕を両手で差し出す。
「そしたら儲けもん」
僕を受け取った男の子は、その蒼い瞳でじっと見つめてきた。吸い込まれそうだ。
「俊だ。よろしく」
不意に男にしては柔らかそうな唇が動いたかとおもうと、自己紹介してくれた。僕はよろしくの意味を込めて、短く鳴いて返事をしてみた。
次の瞬間には痛いくらいの頬ずりをお見舞いされていた。
うん、いい人だね。動物好きに悪い人はいないよ?僕はいい家族に拾われたようだった。
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