ぷろろーぐ

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それは寒い夜の事だった。梅雨真っ只中で、尚且つ台風まで近づいていたらしい。雲の蛇口は誰が捻ったのか、横から凄まじい風と一緒に水が飛んでくる。傘も差さずにいればものの数秒で身体は冷え切ってしまう。傘を差しても飛ばされるかな。 そんな日であっても、段ボールの中で凍え死にそうになった事のある人はそうそういるまい。 いや人ではないのだけど。 僕は生まれたばかり。運悪く、一緒に生まれた兄弟達とは離ればなれとなっている。 貰い手がいなかったんだって。 せめて土管の中にでもいれてくれればいいのに、電柱の脇にポツンと、ひっそりと置かれてしまっている。早く見付けてほしかったのかな。 それでも元ご主人様は僕をここに置いていく時は泣きそうだったし、毛布も置いてってくれた。優しい人だし恨むなんてとんでもない。色々家庭の事情ってやつがあったんだろう。 それでも流石にここで孤独に凍死する寸前くらい、恨んだってバチはあたんないと思わない? そんな命の残量と相談していた時だった。いきなり雨が止んだのである。そして電灯の光まで消えてしまった。 ああ、とうとう五感までなくなっちゃったのね、と悲観してたら、急に地面が無くなって浮遊感。 その時にだれかに抱えれらているのが分かった。
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