序説―オフ会やるYO―

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次に口を開く頃にはすっかり普段の凛とした従者の面構えをしていた。 「失礼しました、御主人様。御主人様にそんな思惑があることなどつゆしらず・・・先程のご無礼の数々をお許し下さい。恐縮ですが、旅立ちはいつ頃のご予定でしょうか?」 「うむ、出来るだけ早い方が良いと思ってな、今晩出発しようと思うのだが。」 こちらも顔を取り繕っている。ただしこの場合風格ある王を気取るのではなく、事が思惑通りに進んでいてニヤニヤするのを堪える、という意味合いなのだが 「とめても無駄でしょうね。・・・わかりました。フギン、いらっしゃい。」 ムニンが腰元に付いた貝殻の小さなベルを鳴らす。 リィン・・・リィン・・・―と小さな音が部屋中に鳴り渡る。 その音がだんだん小さくなっていき、微かな音すら聞こえなくなると同時に、外からのドタドタと騒がしい足音が真っ直ぐこの部屋に向かってきていた。 足音が部屋の前で止まったと思ったその矢先に、ドアが悲鳴をあげんばかりな勢いで蹴破られた。
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