始まり

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二人がやってきたのは、とある長屋。                     「ごめんください。拙者、訳あって娘と二人で旅をしてる者でございます。御覧の通り娘は幼く体力に欠けております故、しばらく逗留したく、こちらでご厄介になりたいと存じまして参りました。店賃の滞りは致しませんので宜しくお願い致します」             この長屋の大家というのが人の良いので有名な善兵衛さん。                       男の連れてる娘の顔を見るとニッコリ笑って言った。                「こんな幼い娘を連れて旅とは…訳ありの様だね。ま、訳は聞くまい。いつまででも、ここにいなされ」                      「かたじけない」                 男は前金として、いくらかの金を大家に渡し自分の家の中へ入っていった。                入り口には、娘の首から下げてあった紙看板がぶら下げられ、風に揺られていた。
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