序章

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 この季節が、一番好き。だと思う。  うららかな春の日差しの中で、改めてそう思う。そこかしこから目覚めの気配がするし、緑の匂いを肺一杯に吸い込めば、それだけで身体が軽くなった気がした。  そしてなにより。  一番大好きな花が咲く。  中学の頃から使い込んで些かくたびれた自転車を、道路から舗装されていない畦道に入る。  草の生い茂る駐車場変わりの小さな空地に自転車を転がした。  決してめんどくさい訳ではない。立てたいのだが、やわらかい土の上ではスタンドが沈んでしまい結局倒れてしまうのだ。  カゴの中からかばんを取り出すと、土筆や蓬を踏み分けて、目の前に迫る林を見上げる。  大きな、石で出来た鳥居が静かに立っていた。 ・
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